足がだるい
立ち仕事や長距離歩行、スポーツなどの後に、足のだるさや足が重いと言った感覚が生じます。また、疲労や足の血流悪化によって、慢性的な足のだるさを抱えているケースもあります。慢性的な強い足のだるさがある場合、有効な治療が可能な下肢静脈瘤の可能性があります。なお、足のだるさにむくみが伴う場合には、心疾患や腎疾患など深刻な病気も疑われますので、早めにご相談ください。
足がだるくなる原因
慢性的に足のだるさがある場合、疲労が蓄積してふくらはぎの筋肉が緊張し、固くなることが原因で生じている可能性があります。足は心臓から最も遠く、重力の影響を受けますので、血流が悪化しやすい傾向があります。足に送られてきた血液を心臓に戻すためには、ふくらはぎの筋肉が血液を押し上げるポンプの役割を果たしています。ふくらはぎの筋肉が緊張して固くなるとポンプ機能がうまく働かなくなり、血流が悪化して酸素不足や老廃物が溜まることで足のだるさや重さを生じます。
足の血行と足のだるさ
立ち仕事をされている場合、夕方になると足のだるさやむくみが生じることがあります。こうした足のだるさやむくみは、疲労ではなくうっ滞による酸素不足や水分・老廃物の増加が原因となって起こっている可能性があります。
ふくらはぎのポンプ機能がうまく働かなくなると、心臓に血液を戻す静脈の血流が悪化し、静脈弁に大きな負担がかかって逆流を起こし、血液が滞留してうっ滞を起こします。うっ滞は、足のだるさだけでなく漏れた血液によって皮膚の色素斑やかゆみを生じることもあります。また、繰り返される負担によって静脈弁が壊れてしまうと、下肢静脈瘤を生じる可能性もあります。
下肢静脈瘤の可能性もあります
血液の逆流を防いでいる静脈弁が障害されて血液が逆流し、滞留した血液によって静脈の血管が拡張してしまう疾患です。足のだるさやむくみを生じ、夜中に足がつる(こむら返り)を起こすことがあります。また、目で見てわかる症状として、クモの巣のように細かい血管が皮膚から透けて見えるようになる、ボコボコしたコブ状の静脈瘤が皮膚のすぐ下に現れるなどがあります。女性の発症が多く、妊娠・出産や立ち仕事などは発症リスクが高いとされています。
足のだるさを予防・解消するために
ふくらはぎのポンプ機能を正常に戻し、血行を改善することが足のだるさの予防や解消に役立ちます。
屈伸やアキレス腱を伸ばすストレッチ
屈伸やアキレス腱を伸ばすストレッチは、足に滞留した血液を循環させるために有効です。血流が改善することで、不足していた酸素が供給されて老廃物が運び出されるので、足のだるさの予防・解消につながります。こうしたストレッチをこまめに行うようにしましょう。
弾性ストッキングの着用
医療用の弾性ストッキングは血液が下から上に流れやすくなるよう、足首の着圧が最も高く、上に向かうに従って着圧が弱くなるように設計されています。弾性ストッキングを正しく着用することで、ふくらはぎのポンプ機能の働きがサポートされ、血流改善が期待できます。市販の着圧ストッキングは着圧が弱ですが、医療用の弾性ストッキングには、弱・中・強の3種類があります。状態に合わせた弾性ストッキングを選ぶためにも、お悩みの場合にはお気軽にご相談ください。
横になって行うマッサージ
ベッドなどに横になった状態で片方の膝を立て、その上にもう片方の足のふくらはぎを乗せて足首を揺らすと、適度な強さで効果的なマッサージが可能になります。入浴中にバスタブで行うのもお勧めです。
むくみとは
体内の水分量が過剰になっている状態で、心臓から遠く、重力の影響を受ける足は特にむくみやすいとされています。全身の血液の約7割が下半身に集まると考えられており、心臓に血液を戻すためにふくらはぎの筋肉がポンプのように働いています。また、静脈弁が血液の逆流を防いで効率よく血液が流れるようにしています。こうしたことから、足の筋肉を動かさないでいると血流が滞ってうっ滞を起こし、むくみなどの症状を起こします。
むくみの原因
足のむくみは、立ち仕事や運動不足などの生活習慣によって生じているケースと、疾患の症状として現れているケースがあります。原因疾患には命の危険につながるものもありますので、注意が必要です。
生活習慣によるむくみ
同じ姿勢を長時間続ける
足にたまった血液を心臓に戻すためには、ふくらはぎのポンプ機能を働かせるために筋肉を伸び縮みさせる必要があります。デスクワークや立ち仕事ではポンプ機能が働かず、血液が足にたまってむくみの症状を起こします。下肢静脈瘤発症のリスクが高いので、こまめにストレッチを行うなどの対策が必要です。
運動不足
運動不足によってふくらはぎの筋力が低下するとポンプ機能も弱くなり、血液が足にたまってむくみの症状を起こします。
ダイエットや偏った食事
極端なダイエットや偏った食事によって、たんぱく質やミネラル、ビタミンが不足すると、ふくらはぎの筋力が低下してポンプ機能も弱くなり、血液が足にたまってむくみの症状を起こします。
過剰な飲酒
アルコールを適量以上に摂取すると体内の水分が減少して血液がドロドロになり、それを薄めるために血管に多くの水分が取り込まれてしまい、足にむくみの症状を起こしやすくなります。
体温調節
室温が一定にコントロールされた室内で長期間過ごしていると温度変化に対して体温調整をうまく行えなくなり、代謝が低下して体内の水分が過剰になり、むくみを起こすことがあります。
冷え
冷えは、その部分に血液が十分届いていない血流の悪化によって生じます。血流が悪化すると余分な水分や老廃物の排出が不十分になり、むくみの症状を起こします。
女性に起こるむくみ
女性は男性に比べると筋肉量が少なく、血液を戻す力が弱いことからむくみを起こしやすい傾向があります。生理前は黄体ホルモンの影響で身体の水分量が増え、むくみを起こしやすい時期です。また、妊娠中には特に体内の水分量が過剰になってむくみを起こしやすく、妊娠した方の約3割にむくみが起きているという報告がされたこともあります。
病気が原因で起こるむくみ
慢性的なむくみが続く場合や、急激なむくみの症状が起こった場合には、治療が必要な疾患が原因となっている可能性があります。深刻な疾患も疑われますので、できるだけ早く受診してください。
受診が必要なむくみ
- 1日中むくみが続く
- 何日もむくみが解消しない
- 足の血管が皮膚のすぐ下でコブ状に盛り上がっている
- 足にクモの巣のような細い血管が透けて見える
- むくみに足のだるさや痛みを伴う
- 顔やまぶたにもむくみがある
- 急な体重増加を伴う
- 尿が少ししか出ない・出にくい・排尿回数が減った
- 疲れやすい・全身疲労感がある
- 坂道や階段を上ると息切れする
など
心不全
心不全を起こすと、心臓から血液を送る力が弱まって血液循環が滞り、むくみや息苦しさなどの症状を起こします。心不全は心臓の機能が低下している状態であり、原因疾患には、狭心症・心筋梗塞、心臓弁膜症、心筋症など多くの疾患があります。命に関わる状態ですので、すぐに医療機関を受診する必要があります。
肝臓や腎臓
肝臓や腎臓が障害されると、血中の水分量の調節がうまく行えなくなってむくみの症状を起こします。むくみが腎臓病によって起こっている場合、慢性腎臓病で損なわれてしまった腎機能は回復が見込めませんので、できるだけ早く適切な治療を受ける必要があります。
リンパ浮腫
がんの手術でリンパ節郭清などを行ったり、放射線治療でリンパ節にダメージを受けたりすると、手足のリンパ液の循環が滞って強いむくみを起こすことがあります。発症の時期は、術後すぐから10年経過した時点など個人差があります。なお、がんの治療以外でリンパ浮腫を起こす特発性リンパ浮腫の原因は不明です。
リンパ浮腫は急激に悪化して蜂窩織炎など深刻な合併症を起こすことがあり、自然に解消することはなく、適切な治療が必要です。リンパ浮腫の場合は、連携している高度医療機関をご紹介しています。
下肢静脈瘤
同じ姿勢で長時間過ごすなどによって過剰な血液が足に溜まり、うっ血によって拡張した血管がコブ状になって皮膚のすぐ下に透けて見える、クモの巣のような血管が皮膚の上から見える、足がむくむ、足がだるい・重いなどの症状を起こします。
深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)
長時間同じ姿勢をとり続けることで、深部静脈に血栓ができて血流が止まり、強いむくみの症状を起こします。血栓が流れて肺塞栓症を起こし、命に関わる可能性のある危険な病気です。急に強い足のむくみが起こった場合にはすぐに医療機関を受診してください。寝たきり、長時間の航空機やバス乗車などで起こりやすく、地震の際の車での避難生活で発症したケースも報告されています。
長時間移動をする場合には、適度な水分補給、こまめなストレッチを心がけ、必要な場合には医療用の弾性ストッキングを正しく着用しましょう。